荒天の海、洗面器の鈍光(旅152日目)

12月4日 雨/曇 種子島―屋久島

朝から雨。風も強かった。だが、トイレ内はとても快適。なんせ雨は吹き込まないし、風で飛ばされることもない。誰かが来て、トイレ前のカブを見るなり「松本か・・・」と呟いて去っていった。


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朝兼昼飯を食べる。万が一海が穏やかじゃなかった場合に備えて、胃の中は乗船までに空にしておく必要があった。ゆーっくり撤収して、14:45発のフェリーに間に合うように出発。

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フェリーが出向している港は二箇所ある。西之表港と島間(しまま)港だ。私は種子島の後は屋久島に渡ることにした。屋久島の町営フェリーが出る島間港へ。フェリー乗り場がどこか分からなくてうろうろしたが、フェリー太陽が入港してきてやっと場所が分かった。
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発券所で「今日は時化てて原付は乗れないかもしれません」と言われて焦る。受付の人は無線でフェリーのスタッフに連絡を取り、OKが出た。フェリーの相場が分からないので、2100円は安く感じた。

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打ち上げ翌日で、西之表港から出るフェリーはいびすかすも、共同なんちゃらというフェリーも満車。種子島から出たい人たちで溢れる港。打ち上げを見に来る人が、島にお金を落としていくんだなー。ちなみに高速艇トッピーがあるが、トッピーはトビウオのことらしい。

フェリー内部に大型のエレベーターがついてた。車はバックで乗船しエレベーターに乗って降りる。船底の駐車スペースに並べていく方法だった。海なし県民、こんなフェリーを見るのは初めてだった。
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昨日の打ち上げの打ち上げにいたメンバーの一人、カワベ氏もこの船に乗った。彼は屋久島ガイドをしている。


船員から「今日は波が高いので、濡らしちゃいけない荷物は中に持っていってください」と注意があった。カブは屋根のないところに固定されたから、間違いなく濡れる。濡らしちゃいけないって、雨だからか?そのときの私はそう考えていた。


船内は二等の雑魚寝部屋で、窓側のコンセントがある場所を陣取った。制服姿で、ちょっと偉そうな帽子を被った人が部屋に来た。船長だろうか。「皆さん、絨毯を汚さないでくださいね」とニヤニヤしながら一言言って、去っていった。昭和感漂うレトロな銀色の洗面器が、入口付近の棚の上に積み上げられていた。なるほど、これを使えということか。

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フェリーは間もなく出港した。はいびすかすと比べると、小さな船だ。堤防より沖に出ると、直後に大揺れが始まった。高い波に乗り上げては、急下降を繰り返す。飛行機で例えるなら、気流の安定しない日にエアポケットに入っては落ちる感覚。ジェットコースターなら、上昇と下降の連続。胃の辺りがヒュッと裏返る、あのマイナスG。それを感じた客から、悲鳴か笑い声かのどちらかが聞こえた。

私は最初は笑っていた。余裕だった。ジェットコースター好きにはたまらない。

窓には砕けた波が大量にかかる。スプラッシュマウンテンの最前列なんてもんじゃない。湯船の水を一度にぶちまけた以上の水量で、外が見えなくなる。窓のパッキンが甘くて、しばしば海水が入ってきて船室の荷物にかかった。
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この波だから「濡らしちゃいけない荷物は中へ」だったのか。まあ、船内でも一部箇所では濡れているが。チドリ号さびさびになりそうだ。

余裕もつかの間。延々と続くマイナスGと戦ううちに、気分が悪くなってきた。積んであった洗面器は、気づいたら随分と減っていた。周囲からは嘔吐していると思われる音、声が聞こえてきた。その音を聞いて余計に気分が悪くなった。見ない、聞かないように心がける。胃の中を空っぽにしておいて良かったと思った。

進行方向に頭を向け、仰向けになった。落ちるときに息を吐き、高波に乗るときに息を吸う。このサイクルだとマイナスGが幾らか緩和されることに気づいた。呼吸を整えた結果、屋久島につく間に少しだけ寝ることができた。

港に着くアナウンスで起こされた。堤防内に入って、少しは波が治まる。起き上がると、胃が踊っていた。洗面器を取りに行く気力もなく、しばらく立ち上がるのが困難だった。私を見かねた隣のおばちゃんが、酔い止めをくれた。今更飲んでも・・・と思って飲んだが、変わらなかった。おばちゃんは余裕だったみたいだ。

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こんなに酔ったのは初めてだった。グロッキーなのは、カワベ氏も同様だった。もう荒れてる日には乗りたくない。最終的に、銀色の洗面器は2つになっていた。
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屋久島のライハ、とまり木に宿泊。2千円/日。水道とホースを借りて、チドリ号にかかった潮水をとりあえず流した。

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踊ってた胃も落ち着き、多少の食欲は戻ってきたので夕飯。
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この日の宿泊者は4名。誰かが買ってきた屋久島の焼酎、三岳(みたけ)でプチ宴会。焼酎は苦手で飲めないんだけどね。
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これ、どんど揚というらしい。私が知ってる名称は『歌舞伎揚』だ。
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船に揺られて疲れてしまったので、早めに就寝。



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by chidorigo | 2015-06-05 06:00 | 九州編 | Comments(2)
Commented by ドンちゃん at 2015-06-05 17:06 x
初めまして! 大台ヶ原へ行かれた日の朝と夕方に道の駅で出会ったんですが、覚えていますか?
あの日は、無事にテント張る事出来ましたか?ちょっと心配しました。ブログでもされてるかなと思い、帰ってから探したら見つけてしまい楽しく読ませていただいてます。
ほんの少しだけさいちーさんと話して、気持ちが少し前向きになりました。仕事や歳のせいにしないで、元気なうちに色んな事にチャレンジしてみようかな??まずは、バイク整備して、日帰りツーリングから始めようかな☺
今どの辺りですか?大阪は梅雨入りしましたが大丈夫ですか?無事にゴールしてくださいね。遠くからお祈りしています。それでは、お元気で??
Commented by 風ささき at 2015-06-05 20:32 x
天候にもろ左右される海原、流石に職業にしてる人は慣れるんだろうけど。
まさに地に足が着いてない状態はキツイこと。
外海は大型フェリーでさえ揺れに揺れる。
でもいつも移動は大型フェリーを利用してた、何もしない贅沢な時間を手にいれられる。
片岡義男の本ばかり読んでいた船内、潮風と航跡の白い波の線。
旅に出た実感。
明日もいい旅を。
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